| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-066  (Poster presentation)

ヤマグワの葉の立体構造と切れ込みは何のためか

*串田隆佑, 小山耕平(帯広畜産大学)

植物の葉は、その形状に種内変異が見られることがあり、個体間でも個体内でも形状の違いが見られることがある。ヤマグワ(Morus australis)は、日本に広く分布する落葉性高木である。本種は葉の両端が持ち上がるようにして立体構造をとり、葉の辺縁部から切れ込みが入ることがある。これらについても、個体間だけでなく個体内でも違いが見られる。ヤマグワの葉のこれらの特徴について、その適応的意義を解明する。調査地は帯広畜産大学構内ビオトープおよび売買川周辺とした。個体ごとに当年枝のついた枝を樹冠内の上部と下部に分けて採取し、葉の形態を測定した。葉の測定項目は、葉身長、最大葉身幅(立体形状時と平坦形状時の2種類)とした。加えて帯広の森を調査地として、ヤマグワの葉の光合成速度を測定した。葉の形態的な指標として、立体度、当年枝上での葉の相対位置(付け根から根元)、アスペクト比を算出した。結果は、樹冠の上部の葉ほど立体的であり、逆に下部の葉ほど平面的であった。さらに、当年枝の先端側ほど立体的であった。また樹冠上部は、葉が大きくその枚数が多かった。立体的な葉は、隣同士に配置する葉が相互被陰するのを避けながら、葉数を増やし、葉の配置密度を上げることを可能にし、受光効率の向上に貢献していると考えられる。加えて、葉の切れ込みは大きな葉に入る傾向があり、大きな葉ほど幅広になる傾向があった。幅広の葉は、葉の両端を持ち上げて立体形状をとるのに適していると考えられる。光合成速度は樹冠上部で高く、光合成能力の高い葉を配置していた。これらから、樹冠下部に比べて強い日光が当たる樹冠上部は、光合成能力が高く立体度の高い大きな葉を多く詰め込むように配置することで、光強度が強い場合でも光飽和によって光合成速度が頭打ちになるのを避けており、光利用効率(受光量当たりの光合成量)を向上させていると考えられる。


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