| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-090  (Poster presentation)

ヒメツリガネゴケにおける過重力応答メカニズムの解明

*安田柚里(京都工芸繊維大学), 久米篤(九州大学), 蒲池浩之(富山大学), 森耀久(富山大学), 唐原一郎(富山大学), 藤田知道(北海道大学), 半場祐子(京都工芸繊維大学)

人類が宇宙ステーションなどの宇宙環境で長期滞在するためには、閉鎖生態系生命維持システムが必要になる。植物は食料となり、光合成によって二酸化炭素を消費して人間が利用する酸素を供給する点から、人間の宇宙環境への滞在にとって重要である。植物の中でもコケ植物は小型であるため、宇宙環境の限られた空間で栽培する上で有利である。ただし、コケ植物を宇宙環境で利用するためには、重力変化をはじめとする宇宙特有の環境で生育できるかどうかを確かめる必要がある。コケ植物の重力応答を明らかにするため、2019年にISSでのヒメツリガネゴケの微小重力実験を予定している。それに先立ち、栽培条件の確立が不可欠である。そこで、本研究ではISSでの微小重力実験に向けて、ヒメツリガネゴケの栽培環境を検討することを目的とした。
ISSでの2ヶ月という限られた実験期間でヒメツリガネゴケを適切に成長させるためには、栽培する培地と栽培密度が重要なファクターである。栽培する培地を決定するために、BCD培地およびBCDAT培地で48日間ヒメツリガネゴケを栽培し、クロロフィル量およびバイオマスを比較した。また、ISSで使用する予定のPEU容器で3×4および4×6の密度で茎葉体を植えて8週間栽培し、ガス交換装置を用いて光合成速度を比較した。また、ISSでの実験後、本研究室で分析を行うまでには2週間の冷蔵保存期間がある。そこで、2週間冷蔵保存したのち光合成速度を測定し、その変化を調べた。
BCDAT培地で栽培したヒメツリガネゴケの方が、バイオマスが大きくクロロフィル量も多かったにも関わらず、BCD培地とBCDAT培地で栽培したヒメツリガネゴケの光合成速度に有意な差はなかった。また、PEU容器で密度を変えて栽培したヒメツリガネゴケの光合成速度に有意な差はなかった。
現在、コケ植物の重力応答のメカニズムを調べるために過重力下で栽培したヒメツリガネゴケの変異体の解析も進めている。その結果も併せて報告する。


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