| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-119  (Poster presentation)

ニューカレドニアで適応放散したシソ科植物Oxera baladicaの全分布域を対象とした遺伝的集団構造解析

*藤田琴実(東北大・農), 満行知花(九州大・理), 綱本良啓(東北大・農), 井鷺裕司(京都大・農), Gildas Gâteblé(IAC), 陶山佳久(東北大・農)

 Oxera baladicaは,ニューカレドニアの各所に小規模な集団としてパッチ状に隔離分布している固有種である.この属内の種群は,種間や種内の生育地域間で大きく異なる形態的特徴が認められ,ニューカレドニアにおいて急速に適応放散した分類群だと考えられている.本研究では,本種における遺伝的分化の全体像を把握することを目的として,本種の全分布域から採取したサンプルと,ニューカレドニアに分布する属内のほぼ全種を採取し,本種の遺伝的集団構造を,近縁種との関係とともに調べることとした.
 DNA分析用試料は,2014から2017 年にかけてニューカレドニアにおいて採取した本種26集団463個体と,属内の29種587個体を用いた.これらのDNA試料を対象に,次世代シーケンサーを用いたDNA分析であるMIG-seq法を行い,全個体からゲノムワイドにSNPを探索した.検出したSNP座情報に基づき,まず属内の系統関係を推定した.その結果,本種はこれまで推定されていた系統関係に一致するクレードとしてクラスタリングされた.次に,種内の遺伝的集団構造を解析した結果,島の北部・中部・南部で明瞭な遺伝的分化が検出された.このうち中部集団は,本種の近縁種として発見された新種3種や既知の近縁種1種に匹敵するほど分化した関係にあることがわかった.また,別種としてバヌアツに分布する1種は,中部集団に内包される近縁な関係にあることも明らかになった.さらに階層的な解析として,北部・中部・南部地域ごとにそれらの地域集団の遺伝的集団構造解析を行った.その結果,各地域内集団間においても明瞭な分化が検出され,各地域内に地理的位置に対応した2〜3の遺伝的まとまりがあることがわかった.
 以上のように,本種における種内の明瞭な遺伝的分化が明らかになった.これらの結果は,近縁種を含めた本種の分類を再検討する必要性を示唆している.


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