| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-130  (Poster presentation)

千葉県印旛沼流域における特定外来生物ナガエツルノゲイトウの群落流出のメカニズムの解明

*鈴木広美(東邦大院・理), 長谷川雅美(東邦大・理)

 地域生態系の健全化を目的とした外来種管理には,個々の外来種の生態情報の蓄積だけでなく,本質的な対策のため,外来種の生物学的特性に起因する被害発生メカニズムの解明が必要である.千葉県印旛沼流域の新川と花見川の境に位置する大和田排水機場では,漂着するナガエツルノゲイトウが排水ポンプの運転を阻害し,洪水のリスクを高めることが報告されている.しかし,ナガエツルノゲイトウが排水機場に漂着するメカニズムの全体像は把握されていないのが現状である.そのため,大和田排水機場においてナガエツルノゲイトウ群落が漂着するメカニズムを特定し,河川域でのナガエツルノゲイトウ群落の適切な駆除を実施するための体系的な対策に資する知見が必要である.そこで本研究は,排水機場にナガエツルノゲイトウ群落が漂着するまでに,河川における群落の流出,群落の移動,漂着という3つのプロセスを経ると仮定したモデルを構築し,過去9年間のモニタリングデータをもとに統計学的に検証した.平成18年から26年のモニタリングでナガエツルノゲイトウの分布が確認された範囲をもとに,大和田排水機場に直結する新川と,新川に流入する桑納川,神崎川を調査対象流域とした.統計学的に検証した結果,桑納川,神崎川から供給されたナガエツルノゲイトウが大和田排水機場での排水運転によって,引き寄せられて漂着する,という過程を経ることがわかった.本研究により明らかになったメカニズムに基づき,ナガエツルノゲイトウの漂着量を軽減するための管理対策を,当面の対応と根本的な対応の2つの視点から提案する.


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