| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-145  (Poster presentation)

人工知能は樹種を識別できるのか~ドローンと深層学習を用いた上空からの挑戦~

*大西信徳, 伊勢武史(京都大学)

森林管理や森林保全の分野において、リモートセンシングを用いた樹種の識別による森林の多様性の評価やモニタリングなどが期待されている。これまで航空機や人工衛星からスペクトル解像度の高いカメラを用いて研究が行われているものの、識別可能種数や識別精度に限界があるため実用化レベルには至っていない。近年活用の進んでいるドローンは、航空機などに比べコストが低くかつ時空間的な柔軟性に富んでおり、さらに林冠付近を飛行できるため解像度が高く、森林管理での新たなツールとしてその可能性が研究されている。また、物体認識の新しい手法として深層学習が注目されているが、未だこの分野では応用が遅れている。
そこで本研究では、ドローンによって撮影された高解像度デジタル画像を深層学習に用いることで、樹種の識別が可能であるか研究を行った。今回用いた手法では、秋季に撮影された写真から作成した全体を俯瞰可能なデジタル画像と数値標高モデルを元に、樹冠を樹木単位である程度分離した後、目視と最近傍法を用いてラベル付けを行い、オブジェクトベースでの学習を行った。クラスとしては、落葉広葉樹、常緑広葉樹、メタセコイア、ヒノキ、スラッシュマツ、ストローブマツ、その他(下層植生や人工物)の計7クラスに分類した。
深層学習の結果、7クラス全体で83.1%の精度で識別することができた。さらに学習用データを回転させるなどしてデータ数を増やした結果、89.0%へと精度が向上した。また、スラッシュマツとストローブマツの識別精度は90%前後であった。これより、ドローンと深層学習を組み合わせることで樹木タイプだけでなく樹種レベルでの識別も可能であることが示唆された。今後この手法を応用することでさらに多くの種の識別や本数のカウントが可能であると考えられ、新たな森林モニタリングツールとしての利用が期待される。


日本生態学会