| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-146  (Poster presentation)

環境DNA解析手法を用いたアカメの検出〜潮の満ち引きによる検出率の変化に着目して〜

*大澤亮介(神戸大学)

アカメは環境省レッドリストで絶滅危惧IB類 (EN)に指定される希少種であり、今回の調査地である宮崎県でも絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。このような背景から、現在アカメの保全や管理が課題となっているが、網や釣りによる採捕調査では、個体を傷つける恐れがあること、人員コストが大きいことなどの理由により頻繁に調査を行うことは困難である。一方で、近年発展する環境DNA分析手法では、採水したサンプルを分析するだけで対象種の在不在や相対的な個体数あるいはバイオマスがわかるため、非侵襲的で低コストな調査が可能である。そこで環境DNA分析手法を用いたアカメのDNA検出手法の作成および野外での適用を試みた。また、潮の満ち引きによりアカメのDNAの検出率がどのように変化するかについて調査した。アカメに種特異的なプライマーとプローブを作成し、環境DNAの検出系を確立させた後、調査地周辺で採水したサンプルでアカメのDNA検出を試みた。網などによる採捕調査でアカメの稚魚がいることがわかっている宮崎県宮崎市の津屋原沼周辺の6ヶ所で、2017年の9月と10月に下げ潮時、干潮時、上げ潮時に採水を行った。その結果、下げ潮時や干潮時に比べて上げ潮時の検出率が下がることがわかった。上げ潮時に検出率が下がるのは水が流入することで水中の環境DNAが希釈されるためだと考えられる。この結果から、潮汐の大きな水域で環境DNA分析手法を用いる際には、下げ潮か干潮時に採水することが推奨される。


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