| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-158  (Poster presentation)

千葉県におけるイノシシの捕獲ワナ設置位置の配置の改善

*横山雄一, 笠田実, 宮下直(東京大学)

 近年、イノシシの個体数が著しく増加し、農作物被害が各地で問題になっている。その一方で、イノシシにおいて推定手法が確立されおらず、正確な推定が得られていない。捕獲データは管理事業の一環で得られ、有用な密度指標であることが知られているが、それによる推定の不確実性が報告されている。そこで、本研究では捕獲データを利用したイノシシの個体数推定の精度改善につながる箱罠設置のシナリオを考察し、推定精度改善による将来の最適な個体群管理を可能にするような空間配置を提案することを目的とした。
 本研究では千葉県自然保護課の協力により捕獲データを取得し、千葉県において捕獲データが得られている地域を対象とした。捕獲データは直近4年間のものを用い、千葉県が定める管理ユニットを単位に解析を実行した。CPUEからイノシシの個体数を推定するモデルを用い、状態空間モデルによりユニットごとのイノシシの個体数の年次変化をモデル化した。個体数の精度向上につながるシナリオを評価するために、新たに追加する仮想データを生成するシナリオをいくつか用意し、そのデータを加える前後での推定精度を比較した。現実の環境のデータや努力量をもとにモデルに合うシミュレーションデータを作成し、それによる推定によってシナリオごとの推定の正確度と精度を評価した。
 その結果、捕獲情報の蓄積が多い地点で捕獲データを追加で取得することで、初年度個体数の推定値の正確度が下がる傾向が見られた。また、捕獲情報の蓄積が少ない地点を少数選ぶことでパラメータの推定値の正確度が改善する傾向が見られた。
 継続的に同じ地点で捕獲データを得ることは、現実的には箱罠の設置に関して最も考えられるシナリオであるが、それによって得られる推定は精度が低下する可能性があることがわかった。そこで、努力量の一部を過去の捕獲データが少ない地点に分配することで、精度の向上を導くことが出来ることがわかった。


日本生態学会