| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-173  (Poster presentation)

植物上に残された昆虫のDNA抽出方法の開発

*米谷衣代(近大・農学部), 潮雅之(京大生態セ, JSTさきがけ), 神野五基(近大・農学部)

 植物上に生息する昆虫などの節足動物の発見、同定、調査はその個体数が少ない時、体サイズが小さいとき、移動性が高い時に困難となる。このような目に見えない(見えにくい)生物の調査に、近年、水域を中心に環境DNAの利用が試みられている。しかし、植物を利用する生物の環境DNAに関する研究はあまり進んでいない。その理由の一つとして、水をくむだけで環境DNAを回収できる水域とは異なり、植物上から環境DNAを回収するのが困難であることが挙げられれる。そこで、本研究では、DNA解析技術(環境DNAメタバーコーディング)を活用することにより、植物上の節足動物のデータ収集を可能にする基盤技術開発を目指している。
 本発表では、植物上にいる節足動物が残した環境DNAを回収する方法について検討した結果を発表する。DNAが回収できたかどうかはCOI遺伝子領域を次世代シーケンサーで読むことで、検証した。主な結果は鉢植えのナス、キャベツおよび地植えのキャベツ上から植物を傷つけることなく節足動物の環境DNAを回収することに成功したことである。検出した節足動物にはアブラムシ、チョウ目の幼虫などの植食者に加えて捕食性の寄生蜂なども含まれていた。また、目視では確認できていなかった微小なコナジラミやハダニも検出された。一方、同じアブラムシでも全く検出できなかった種もあり、今後、プライマーや回収方法の検討をさらに行う必要がある。


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