| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-181  (Poster presentation)

高知県大月町西泊における野外での浅海性ナマコ類の繁殖について

*目崎拓真, 中地シュウ(黒潮生物研究所)

 浅海性のナマコ類は基本的に雌雄異体で、体外に精子や卵を放出して海中で受精が行われる。放卵放精時には岩盤など平時より位置が高くなるように移動して、さらに前方部から半分以上体を持ち上げて、前後左右に体を揺らしながら、前方背側にある生殖孔から精子又は卵を放出する。これまでナマコ類の産卵期など繁殖に関する情報は、採集したナマコ類から得られた生殖腺の発達や誘発産卵による室内での観察によって集積されてきた。その一方で繁殖行動、繁殖時期、繁殖時刻に関する野外での報告例はあまり多くない。そこで本研究では、高知県大月町西泊地先の海で2006〜2017年までにスキューバ潜水やシュノーケリングで観察された浅海性ナマコ類の野外での繁殖について報告する。
 野外で放精又は放卵が観察されたナマコ類は2科3属5種で、シカクナマコ科アカオニナマコ、オニイボナマコ、クロナマコ科ニセクロナマコ、トラフナマコ、トゲクリイロナマコだった。これまでの観察例と同様にすべての種で平時より高い位置に移動し、体を持ち上げてL字のようになり、前後左右に体を揺らしながら複数回にわたって卵又は精子を生殖孔から放出していた。観察された時期は6月~9月で、繁殖日の日平均水温の範囲は21.6〜28.8℃だった。放卵放精が確認された時刻は、シカクナマコ科では日没後のみで19:40~21:10、クロナマコ科ではクロナマコとトラフナマコが日没前の午後と日没後の両方で確認され、トゲクリイロナマコが日出後の午前のみの確認だった。データ数が少ないため月齢との周期性は不明な種が多いが、データの多いオニイボナマコでは種内の同調性が高く、新月の大潮で繁殖行動が見られる事がほとんどで、わずかに満月の大潮でも放卵放精が確認された。


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