| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-195  (Poster presentation)

ホソヘリカメムシの誇張形質の発達におけるインスリン様シグナルの役割

*洲崎雄(大阪市大・院・理, JSPS PD), 香月雅子(東大・院・総合文化), 間野玄雄(大阪市大・院・理), 岡田賢祐(岡山大・院・環境生命), 後藤慎介(大阪市大・院・理), 岡田泰和(東大・院・総合文化)

多くの生物のオスは、大きく発達した角や大顎、装飾形質をもつ。これらの誇張形質は、メスをめぐるオス同士の戦いにおける武器や、メスがオスを選り好む際の指標になっている。誇張形質の発達の制御には、成長因子としてインスリン様シグナルが関与していることが甲虫の武器形質に関する研究で明らかになりつつある。しかしながら、他の分類群においてもインスリン様シグナルが共通の誇張形質発達メカニズムとして関与しているかどうかはまだ明らかになっていない。
 ホソヘリカメムシRiptortus pedestrisのオスは、大きく発達した後脚を持ち、この後脚を用いてメスをめぐる闘争を行う。また、メスは大きな後脚を持つオスを交尾相手として好むことがわかっている。本種のオスの後脚の誇張にもインスリン様シグナルが関与しているかどうかを調べるために、4齢幼虫にイスリン様ペプチド遺伝子(ILP1, ILP2)、インスリン様ペプチド受容体遺伝子(InR)、またはコントロール遺伝子(大腸菌βラクタマーゼ: bla)の二本鎖RNAをインジェクションし、成虫時の体サイズと後脚サイズを比較した。
 インスリン様シグナル関連遺伝子のノックダウンは、雌雄いずれにおいても絶対的な体サイズや後脚サイズに有意な影響を与えなかった。しかし、ILP1InRの発現をノックダウンされたオスは、体サイズに対する相対的後脚サイズがコントロール群よりも小さくなる傾向があった。メスの相対的後脚サイズは、インスリン様シグナル関連遺伝子のノックダウンの影響を受けなかった。したがって、インスリン様シグナルは、本種においてもオスの誇張形質の発達に関与していると考えられる。


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