| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-221  (Poster presentation)

グッピーからカダヤシへの繁殖干渉(2)集団飼育実験による実証

*鶴井香織(琉球大・戦略研究セ), 藤本真悟(琉球大・戦略研究セ), 出岐大空(琉球大・農・昆虫), 勝部尚隆(琉球大・院・農・昆虫), 立田晴記(琉球大・農・昆虫, 琉球大・院・農・昆虫), 辻和希(琉球大・農・昆虫, 琉球大・院・農・昆虫)

世界中の侵入先で在来種を駆逐し、侵略的外来種ワースト100にも選ばれるカダヤシが、沖縄島でグッピーに駆逐されつつあるのはなぜか?我々は、そのメカニズムとして繁殖干渉に注目している。繁殖干渉とは種間の配偶行動によって引き起こされる種間競争の一種で、外来種が在来種を駆逐するメカニズムの1つとして注目され始めている。我々が実施した個体レベルの飼育実験により、グッピーからカダヤシへの一方向的な繁殖干渉が起こることが既に確認されている(出岐ら, ESJ65, P1-169)。本研究では、集団レベルにおいてもグッピー雄がカダヤシ雌の産仔数を低下させるかを検証した。カダヤシ集団のみ(カダヤシ雌6・カダヤシ雄4)の同種区とカダヤシ集団にグッピーのオスを追加した干渉区(カダヤシ雌6・カダヤシ雄4・グッピー雄4)について、5週間の累積産仔数を比較した。また、実験期間におけるカダヤシメスの体重増加を処理区間で比較した。
実験の結果、産仔数は同種区に比べて干渉区で有意に低下した。つまり、グッピー雄による繁殖干渉は集団レベルでもカダヤシの増殖率を低下させた。一方、カダヤシ雌の体重増加は処理区間で差が無かった。これより、グッピー雄による繁殖干渉がカダヤシ雌の適応度を低下させる直接的なメカニズムは、無用な求愛や追尾等による摂食量低下やエネルギー消費ではない可能性が推察された。つまり、グッピーからカダヤシへの繁殖干渉では、交尾後の精子選択や受精の過程が重要かもしれない。
本研究では同種区より干渉区の魚密度が高い。しかし、カダヤシ雌の適応度は雌密度に強く依存する一方、雄密度によらないという先行研究から、本研究で検出された干渉区での産仔数の低下はグッピー雄を追加したことによる密度効果ではなく繁殖干渉によるものと我々は考えている。今後は魚密度をコントロールした追試を行い、更なる検証を進めていく。


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