| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-295  (Poster presentation)

南極湖底堆積物の硝化能定量の試み

*林健太郎(農研機構・農環セ), 田邊優貴子(極地研, 総研大), 藤嶽暢英(神戸大), 木田森丸(神戸大), 早津雅仁(農研機構・農環セ), 工藤栄(極地研, 総研大)

昭和基地が位置する東南極ドローニングモードランド宗谷海岸の露岩域には多数の湖沼が存在する.海跡湖の一部を除き捕食者となる動物プランクトンが存在しないため,湖底にはコケ・藻類マットが広がり,これらに由来する有機物が堆積した湖沼が多い.この独特な湖沼生態系の窒素循環の実態解明に資するため,湖底堆積物表層の硝化能(アンモニア酸化ポテンシャル:AOP)の定量を試みた.調査対象は9湖沼(露岩域スカルブスネスの親子池,長池,仏池,如来池,くわい池;同スカーレンのスカーレン大池;同ラングホブデの雪鳥池;同ルンドボークスヘッタの丸湾大池;および同ブライボーグニーパの広江池)の湖底堆積物表層20 cm(0–5 cmは1 cm刻み,5–20 cmは5 cm刻み;計8層;コア3本)とした.生試料を用い,現地において基質(2 mMアンモニウム)添加好気静置培養による亜硝酸生成速度をAOPとした.培養期間は半日~数日,培養温度は10℃前後とした.なお,テストの結果,振とう培養は亜硝酸生成を完全に阻害するようなため取りやめた.仏池,如来池,くわい池,丸湾大池では明瞭なAOPが検出されなかった.親子池,長池,スカーレン大池,雪鳥池では10 ng N g–1乾物 h–1以上のAOPを示す層が点在し,特に雪鳥池では点数が多かった.ただし,出現深度については最表層では出にくい以外の法則性がないようであった.有機物主体の湖底堆積物は95%前後ときわめて高い含水率を有し,乾物量換算時に含水率測定の誤差が大きくあらわれやすい.また,培養中に亜硝酸濃度がむしろ低下するケースもあった.南極湖底堆積物の精度の高いAOP測定には技術的に克服すべき課題が多い.


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