| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-300  (Poster presentation)

東部瀬戸内海における基礎生産構造

*安佛かおり(京大・森里海ユニット), 宮原一隆(兵庫農水技総セ), 山本圭吾(大阪環農水研), 秋山諭(大阪環農水研), 笠井亮秀(北大院・水産)

東部瀬戸内海において,2016年6月から2017年7月までの隔月で疑似現場法を用いて光合成速度の測定を行い,生産構造を調べた.調査地点は,大阪湾湾奥,大阪湾中央部,播磨灘中央部の3地点に設け,各地点で透明度の2.8倍を補償深度と仮定し,光強度が入射光の100,48,33,14,8.3%となる深度から採水し,現場水温に設定した人工気象器で2時間培養を行った.光強度は最大光量を460-480 µmol m-2 sec-1に設定し,表層以外の試料には各深度の光の減衰率に相当する遮光フィルターをかけた.光合成速度は13C法で測定し,各深度で得られた光合成速度を水柱単位で積分し,日長を12時間とし,一日当たりの基礎生産量を算出した.調査期間における基礎生産量は,地点間に有意な差はなく(ANOVA, p>0.05),またいずれの地点も明確な季節変化を示さなかった.光合成速度の鉛直分布を見ると,2016年11月は,いずれの地点も表層が一番高く深度とともに漸減する一様な分布を示したが,その他の調査日は,極大となる深度もさまざまで,各地点で異なる分布を示した.各地点の生産構造を比較するために,光合成速度の鉛直分布から光強度48-100%, 33-48%, 14-33%, 8.3-14%, 1.0-8.3%の各層の寄与率を求めた.各層の寄与率は,1層目で最高となることが多く,3層目までの合計で75%以上となることが多かった.しかしながら,大阪湾および播磨灘の中央部の2016年6-7月では最深層となる1.0-8.3%層で最も高い寄与率を示した。このときの水柱当たりの基礎生産量は0.74-1.98 g C m-2 day-1と小さいものではなかった。この結果は,東部瀬戸内海における基礎生産量を精確に把握するためには、表層だけでなく有光層の深層部の光合成も適切に評価する必要があることを示唆している.


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