| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-302  (Poster presentation)

『野外分光計測による樹種・深度別の土壌水分・有機物組成の非破壊推定と土壌呼吸活性の評価』

*中路達郎(北海道大学), 牧田直樹(信州大学), 片山歩美(九州大学), 安宅未央子(森林総合研究所), 小熊宏之(国立環境研究所)

森林土壌中の有機物組成および水分含量を簡便かつ迅速に計測することを目的とした分光計測手法を開発し、土壌からのCO2放出ポテンシャルの空間変動の評価を目指して室内および野外計測実験を行った。北海道大学苫小牧研究林(N42.71°、E141.57°)の未成熟森林土壌に立地する落葉広葉樹二次林および人工造林地において13樹種の樹木(針葉樹6種、広葉樹7種)を対象に、リター、有機物土壌(深度0-10cm)および鉱物土壌(深度10-20cm)を採取しCO2放出速度を計測したのち、生土から風乾状態まで土壌含水量を5段階に変化させながら近赤外~短波長赤外波長(0.9~2.4μm)の連続分光反射率を計測した。その後、乾燥土壌中のリグニン、セルロース、全炭素、全窒素の各含有量を定量し、これらの成分とCO2放出速度との関係性を調査した。採取土壌の解析結果をもとに、分光反射率から土壌の各成分を推定するモデルを作成し、その有機物成分から間接的にCO2放出ポテンシャルを推定する手法の開発を目指した。23℃環境下におけるCO2放出速度は土壌層および樹種によって有意に異なった。CO2放出速度はいずれの土壌成分とも正の相関を示し、その関係性はいずれの土壌水分条件においても有意であった(r = 0.79~0.89, p < 0.001)。連続分光反射率を用いてPLS回帰モデルを作成した結果、土壌水分、窒素、セルロースらの推定値(クロスバリデーション)の決定係数は0.89~0.90を示した。分光反射率をもとに推定した土壌組成から推定したCO2放出速度の検証では、決定係数は0.4~0.5程度であった。
これらと別に、野外でトレンチ処理を13樹種・52地点で行い、CO2放出速度(微生物呼吸速度)を計測した。同地点で地中に光ファイバーを挿入し、2cm深度ごとの連続分光反射率を計測し、有機物の深度分布を推定した。本講演では、これらの結果をもとに野外におけるCO2放出ポテンシャルの樹種間差や空間分布の把握法について考察する。


日本生態学会