| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-016  (Poster presentation)

東北地方のミズナラ林の約30年間の植生変化

*星野義延(東京農工大学大学院)

過去に植生調査を行った地点で,同一方法で再び調査を行う再訪調査は,この間の植生変化を把握するのに有効な方法である. 日本のミズナラ林の群落分類を目的に1980年代に植生調査を行った地点で再訪調査を行い,1980年代以降の約30年間に東北地方のミズナラ林に生じた植生変化とその要因を明らかにすることを目的として再訪調査を実施した.調査は2015年8月から2017年9月にかけて72地点で行った.
1980年代と2010年代とで調査区あたりの平均出現種数を比較すると,1980年代は48.4種であったのに対して2010年代では49.7種となり,微増となった.出現回数が減少した種としてはワラビ,アキノキリンソウなどの草本植物や,ヤマハンノキ,タニウツギ,アカマツなどの木本植物,ヤマブドウ,サンカクヅル,オニツルウメモドキなどを挙げることができ,いずれも陽地・林縁生や先駆性の植物であり,約30年の間で森林が発達したことによる構成種の入れ替わりが起こったものと考えられた.逆に,出現回数が増加した種にはヒメアオキ,チシマザサ,ツルアジサイ,チマキザサなどがあり,林内生の植物が多かった.採食痕跡などシカの影響が確認されたのは72調査区中5調査区,ナラ枯れが確認された調査区は6調査区と少なく,これらの影響については十分に解析できなかった.
1980年代と2010年代の種組成の変化を可視化するために,NMDSによる序列化を行った.軸スコアと気候因子との相関を見たところ,第1軸スコアは積雪日数やWIと,第2軸のスコアはWIとの相関が高かった.第3軸は気候因子との相関は低く,土壌の乾湿など地形因子と関連した組成差を表していると考えられた.多くの調査区で2010年代は1980年代よりも3軸スコアが大きくなる傾向が認められた.また,第1軸のスコアの変化量と出現種数の増減には有意な相関があった.


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