| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-025  (Poster presentation)

コンゴ盆地の成熟林における樹木・つる・草本の種構成:大型類人猿ボノボの餌資源分布への示唆

*寺田佐恵子, 湯本貴和(京都大学霊長類研究所)

熱帯林において、つる植物と草本はいずれも高い種多様性を有し、群落の種多様性や種構成の重要な要素となっている。しかし、樹木に比べ、熱帯林のつる植物や草本についての研究は限定的である。一方で、つる植物由来の果実及び草本は、樹木由来の果実・葉などと同様に、アフリカ大型類人猿の主要な餌資源となっている。アフリカ大型類人猿の餌資源分布の解明には、つる植物や草本を含めて、植物群落の特徴を明らかにすることが重要である。本研究では、大型類人猿ボノボ(Pan Paniscus)が生息するコンゴ民主共和国の成熟林において、樹木・つる植物・草本を対象に、局所群落の特徴を調べた。調査は、ルオー学術保護区ワンバ調査地の成熟林で行った。調査区(30m×30m)50地点において、樹木(胸高直径(DBH)>30cm)の種名・DBH、それらに巻き付いていたつる植物の種名、草本(主要4科)の種名・被度・高さを記録した。成長型(樹木・つる・草本)ごとに、種構成に基づき分類し、分類された種構成タイプごとに指標種を抽出した。結果、指標種の多くはボノボが食する植物であり、出現頻度の高い餌資源種の各々が餌資源パッチを形成していることが示された。浸水林と非浸水林では、全ての成長型において種構成が明らかに異なった。また非浸水林内でも、浸水林に近い斜面では、ボノボが食する特定のマメ科(Caesalpineaceae)樹木と特定の草本の科(Commerinaceae)が優占する局所群落が形成されていた。過去の人為的な撹乱の履歴が異なる村の東西では樹木の種構成タイプが異なり、ボノボに対して異なる餌資源が提供されていることが示された。さらに、近年の人為的撹乱の頻度が高い村の近くでは、背の高い草本が多く、ボノボが好む果実を提供する特定のつるの出現頻度が高かった。植物を対象とした群集レベルでの分析を進めていくことで、大型類人猿の餌資源分布の特徴について、より包括的な示唆が得られると考える。


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