| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-051  (Poster presentation)

樹木のマスディング現象の解明に着目した土壌栄養量の経年変化

*韓慶民(森林総合研究所), 壁谷大介(森林総合研究所), 野口享太郎(森林総合研究所), 稲垣善之(森林総合研究所), 佐竹暁子(九州大学)

樹木の結実量は、様々な要因で大きく年変動する。この結実の豊凶現象(マスティング)については、そのメカニズムの解明に踏み込んだ研究は限られていた。本研究では、炭素資源を従来の年貯蔵量の変化(資源収支モデル)から動的な需給バランスとして捉えて、ブナ林を対象に種子や枝・幹など各器官の成長パターンを詳細に解明するとともに、資源を巡る各器官の競争関係および資源の需給関係を明らかにすることを目的としている。豊作に伴うリター組成及びその量が変化することはわかっているものの、土壌栄養塩動態に及ぼす影響については検証されていない。

潟県苗場山90年生ブナ林において結実と非結実個体を対象に、植物根シミュレータ(PRS, Western AG Innovations, Inc., Saskatoon, Sk, Canada)を土壌深10cmに埋設し、定期的に回収して、無機態窒素量(硝酸態とアンモニア態)の季節変化を3年間調べた。その結果、土壌無機態窒素量は積雪期において無機化を進み、夏に一番高い季節変化を示した。また、2倍以上の経年変化があった。根を除去した処理区では、窒素の年無機化量が自然条件下での対照区に比べて3倍高かった。この差は、植物に吸収されたと考えられる。しかし、結実による土壌硝酸態あるいはアンモニア態窒素動態への影響が見られなかった。土壌の窒素量の経年変化について、冬季の積雪量や土壌温度など環境要因との関係より考察する。


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