| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-067  (Poster presentation)

イブキジャコウソウにおける形態および含有成分の地域的相違

*水野隆文(三重大学院生資), 藤森朝章(三重大学生資), 近田翠(三重大学生資), 吉田晴菜(三重大学生資)

[背景・目的]イブキジャコウソウ(Thymus quinquecostatus Celak)は日本に分布する匍匐性タイムの一種であり、変種としてヒメヒャクリコウが報告されている。日本各地に分布する本植物を収集、栽培したところ、形態や花期が自生地によって様々に異なっており、亜種や変種への分類も想定した調査が必要と考えられた。今回、北海道、滋賀、京都/福井、三重を自生地とするイブキジャコウソウについて、形態および芳香成分の地域的相違を調査したので報告する。
[方法・結果]北海道むかわ町坊主山(蛇紋岩土壌)、三重県鳥羽市菅島(蛇紋岩土壌)、滋賀県米原市伊吹山(石灰岩土壌)京都府舞鶴市/福井県高浜町青葉山(凝灰角礫岩質土壌)において各自治体の許可のもとイブキジャコウソウを採取し、三重大学の敷地内にて栽培した。同じ土壌(砂壌土)および野外の気象条件にて栽培した結果、菅島のイブキジャコウソウは起立性が高く、節間長および葉面積が最大であり。坊主山および伊吹山のものは匍匐性が高く、節間が短く生育した。開花期は5月(青葉山)、6月(坊主、伊吹山)、8月(菅島)と別れた。青葉山、伊吹山、菅島のイブキジャコウソウと海外の匍匐性タイム(Thymus longicaulis)の匍匐枝を回収し、水蒸気蒸留を行った。得られた蒸留液に含まれる成分をGC-MSにより解析した結果、国内のイブキジャコウソウには共通してγ—テルピネンとp-シメンの比較的大きなピークが検出されたのに対し、クリーピングタイムにはこれらのピークは現れず、ラヴェンドールと推測される大きなピークが検出された。また全種共通でα-ピネン、カンフェン、β−ミルセン、ボルネオールが検出された他、チモールもしくはカルバクロールと推定される物質も検出された。ピーク数は菅島で最も多かった。


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