| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-071  (Poster presentation)

竹林拡大のメカニズム研究 〜地上部におけるタケと樹木の光獲得競争と成長〜

*小林慧人, 北山兼弘, 小野田雄介(京大・農・森林生態)

 近年、西日本を中心に管理放棄された竹林(モウソウチク林)の拡大が深刻であり、拡大のメカニズムを明らかにすることは竹林管理を検討する上で重要な課題である。モウソウチク(以下、タケ)は中空の構造をもち、樹木よりも、著しく少ないバイオマス投資量で同程度の高さ成長が可能なため、バイオマス投資量あたりの光獲得量が高いことが予想される。この特性により、タケは樹木との光競争で有利になり、竹林拡大に関係している可能性がある。
 そこで本研究では、上記の可能性を検証するため、タケと樹木が混在する13のプロット(5m×5m)において、タケと樹木の相対成長速度と光の獲得・利用様式を解析した。相対成長速度は、バイオマスあたりの光獲得量(光獲得効率)と、獲得した光あたりのバイオマス生産量(光利用効率)の積と考えることができる。さらに光獲得効率は、バイオマスあたりの高さと、高さあたりの光獲得量の2つの要素に分けられる。解析の結果、タケは樹木よりも平均で20%ほど高さが低く、各個体上部の光環境は77%低かったが、相対成長速度は70%高かった。この原因として、タケは、高さ成長に伴うバイオマス投資量が81%少なく、そのために光獲得効率が2倍高かったためである。一方で光利用効率には明確な違いはなかった。これらの特性により、モウソウチクは、樹木よりも2割程度背丈が低くても、中空というユニークな茎特性を持つことで、樹木との光競争で有利になる場合があることがわかった。


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