| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-098  (Poster presentation)

耐風性と光合成生産から見たミズナラ日向/日陰シュート形態の機能的差異

*南野亮子(岐阜大・流域圏セ), 南光一樹(森林総研), 村岡裕由(岐阜大・流域圏セ), 舘野正樹(東大院理・日光植物園)

ミズナラ末端シュートは樹冠内の位置(上部/下部)によって異なる形態をとる。例えば、樹冠上部(日向)のシュートは下部(日陰)のシュートよりも枝の末端からの長さ/直径比が小さく、節間長も小さい傾向にある。樹冠上部シュートは下部シュートよりも強い光を受けると同時に、強い風にもさらされる。長さに対する直径が大きいことは風を受けたときのシュートの変形を小さいものにし、樹冠上部シュートが風にさらされる環境で安定な形を保つ上で有効である。一方で、節間長が小さいことはシュート内の葉の相互被陰を増大させ、単位葉面積あたりの光合成生産において負の要素となりうる。本研究では、樹冠上部/下部シュートの風に対する変形しやすさの違いを調べるとともに、このような力学的機能を持つことと光合成生産性との間にどのようなトレードオフが存在するかを明らかにすることを目的とした。
岐阜大学高山試験地に自生するミズナラの樹冠上部と下部から採取した末端シュート(長さ36-57 cm, 基部直径4.7-6.9 mm)を用いた風洞実験のデータから、日向/日陰シュートが様々な強さの風(4.6, 8.5, 12, 17,19 m/s)に対して起こすたわみの程度を分析した。日陰シュートは低風速の風(4.6 m/s)でも大きく変形し、受風面積も大きく減少したのに対し、日向シュートは同じ風速の下では受風面積はほとんど変化せず、変形具合も日陰シュートに比べかなり小さかった。本研究ではまた、高山試験地で測定されたミズナラ末端シュートの3次元形態データを基に、同実験により得られた抗力係数等を用いて、風を受けたときのシュートの変形の大きさが保たれるような長さ-直径関係を持つ仮想シュートを作成し、これらの仮想シュートにおける光合成シミュレーションの結果を比較する。


日本生態学会