| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-129  (Poster presentation)

氷期間氷期変動にともなう気候と植生の因果関係を探る-Convergent cross mappingによる花粉動態と古気候変動の因果解析から

*林竜馬(滋賀県立琵琶湖博物館), 土居秀幸(兵庫県大院・シミュ), 潮雅之(京都大・生態研)

 日本列島における森林生態系は、第四紀における氷期間氷期変動にともなう気候環境の変化や樹木間の競争関係の変化などの影響を受けて、その組成や分布を変遷させてきた。このような過去の気候変動による森林植生の応答関係について、古生態学的な理解が深まることにより、現在の森林動態の把握や今後の植生変化の予測にも重要な知見を提供できる。これまでにも、花粉分析をはじめとした長期的な時間スケールでの古生態学データを対象に、さまざまな古気候変動データと比較することで、気候−植生間での関係性について研究が進められてきた。しかし、双方の時系列データ間での因果関係についての詳細な検討は行われていない。
 本発表では、琵琶湖堆積物における過去13万年間の花粉分析データと主要な古気候変動データを対象に、非線形構造をもつ時系列データに適用可能な因果推論手法であるConvergent cross mapping(CCM)による解析を行った。植生要因である花粉分析データとしては、暖温帯−温帯性広葉樹/冷温帯−亜寒帯性針葉樹比(広/針比)とスギ花粉出現割合を、古気候変動データとしては、北半球の日射量、全球での氷床量(海洋底酸素同位体曲線)、東アジアのモンスーンの変動を用いた。
 CCMによる解析の結果、気候−植生要素間の因果関係として、広/針比に対する氷床量からの関係性、スギに対する日射量とモンスーンからの影響がそれぞれ検出された。さらに、植生間の因果関係として、広/針比からスギへの関係性が示された。これらの結果は、氷期間氷期変動における日本の森林植生の変化が、樹種により異なる気候要因の変動に影響を受けており、また樹木間の相互関係では広/針比からスギへの一方向的な影響が存在していたことを示唆している。


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