| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-211  (Poster presentation)

物質循環を考慮したアクアポニックスに関する数理モデルの構築と収量予測

*岩田繁英(東京海洋大学)

 人口増加に対応した安定的な食料の供給が求められるが,天然資源を食料とする場合や変動環境下で食料を生産する場合,様々な不確実性により生産量が不安定となる。食料を供給する方法が水産では漁業,養殖,農業では露地栽培,ハウス栽培であるが,養殖,露地栽培は高濃度栄養塩の集積による環境汚染が短所となる。この短所はそれぞれの分野で改善策が検討されてきた。一つの解決策として提案されたのがAquaponicsである。AquaponicsはAquaculture(水産養殖)とHydroponics(水耕栽培)のそれぞれの文字をとって作られた造語である。このシステムでは,Aquacultureで流出する廃液に含まれる栄養塩をHydroponicsで活用することで高濃度の栄養塩集積を軽減することが期待される。これにより栄養塩循環のロスを少なくし環境負荷を低減することが期待されている。
 Aquaponicsシステムでは,収量の最大化,栄養塩集積の軽減の2つの目的があり,これらを達成するために本研究ではAquaponicsシステムを数理モデルで構築しその収量の最大化,栄養塩低減を達成するための条件を計算する。モデルは,魚および植物に関するバイオマス動態を表現する部分と水溶液を介した物質循環(養殖システムからはアンモニアが排出されて植物が利用可能な硝酸塩に分解される過程を表現した)を表現する部分に分けてモデル化した。
 本研究では,モデルに関する解析結果のみ報告する。モデルから,アンモニアから硝酸塩へ分解する速度を早めること,植物の収量を増やすには栄養塩の吸収速度を早めることがそれぞれの収量増加に寄与することが分かった。また,魚の成長はアンモニア濃度によって制限されるため,多量のアンモニアが硝酸塩として,植物が活用しやすい形になれば植物の収量増加につながるうえアンモニア濃度の低下によって収量も増加する。この解析結果は一度の収穫を仮定しているが複数回収穫する場合の最適な収穫時期の計算は今後の課題である。


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