| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-261  (Poster presentation)

セイヨウオオマルハナバチと在来マルハナバチは共存できるのか? ー植生利用及び訪花パターンの比較-

*西川洋子, 島村崇志(道総研環境研)

農作物の受粉用に導入されたセイヨウオオマルハナバチ(以下セイヨウ)は、北海道では野生化して急速に分布を拡げた。すでに定着した地域では、在来マルハナバチと花資源を使い分けている可能性がある。セイヨウの定着が在来マルハナバチに及ぼす生態的影響を明らかにするため、北海道石狩浜の海岸草原とその内陸の農村地域に生息する主要な在来マルハナバチ(エゾオオマルハナバチとハイイロマルハナバチ)とセイヨウについて、景観スケールの植生タイプ利用パターンと各植生タイプでの訪花習性を比較した。植生タイプ利用パターンはマルハナバチ種間で異なり、エゾオオマルハナバチは海岸草原で、ハイイロマルハナバチは農村の二次草原で多く観察された。一方でセイヨウは、多様な植生タイプを利用する傾向が認められた。セイヨウはコロニー創成期には開花開始時期が早い海岸草原で多く観察されたが、コロニーが発達する夏季以降は二次草原や畑地で多く観察された。セイヨウが多く利用する植物は、海岸草原ではエゾオオマルハナバチと、二次草原ではハイイロマルハナバチと類似性が高かった。畑地では作物をほぼ独占的に利用しており、景観スケールで多様な植物を訪花していることが示された。セイヨウとハイイロマルハナバチの訪花頻度は主要植物の開花量と有意な相関を示した。しかし、ハイイロマルハナバチは特定の植物種を長期にわたって利用するのに対し、セイヨウは優占種の開花量がピークに達する時期に集中して訪花する傾向があった。セイヨウと在来マルハナバチの採餌ニッチの重なりは花資源が豊富な短期間に限られているため、在来種がセイヨウから受ける資源制約は一時的であった。セイヨウと在来マルハナバチとの時空間的な採餌行動の違いは、この地域での共存を可能にしていると考えられた。


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