| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-271  (Poster presentation)

豊田市の逢妻女川と逢妻男川におけるミシシッピアカミミガメの防除:民・産・学・官の協働による広域一斉防除の試み

*浜崎健児(豊田市矢作川研), 山本大輔(豊田市矢作川研), 田村ユカ(名大院・環境), 村山恒也(自然研), 井上隆(自然研), 高橋洋生(自然研), 戸田光彦(自然研), 矢部隆(愛知学泉大)

 ミシシッピアカミミガメはアメリカ合衆国中南部原産の外来種である。野外での定着数は全国で約800万個体と推定されており、固有種ニホンイシガメとの競合等、在来生態系への悪影響が懸念されている。豊田市矢作川研究所は環境省「アカミミガメ対策推進プロジェクト」と連携し、市民との協働による防除体制づくりを進めている。
 2017年度は、逢妻女川の15kmと逢妻男川の8kmにおいて、流域の自治区や市民団体および企業からのボランティアと協働で、籠わなによる広域一斉防除を実施した。防除は2017年6月2~4日に逢妻女川、6月9~11日に逢妻男川で、それぞれ3日間行った。1日目の午前に籠わなを設置し、1日目の午後および2~3日目の午前と午後の計5回、掛かったカメを回収した。作業は各河川を5区間に分け、1区間1回あたり6~10名体制で実施した。籠わなは区間ごとに5~10地点を選定して地点毎に2~3個ずつ設置した。捕獲したカメは全て1カ所に集め、種と性別の判定および甲長の測定を行った。
 3日間の作業で、逢妻女川では106個の籠わなで502個体、逢妻男川では91個の籠わなで594個体のカメを捕獲した。このうち、逢妻女川では76%、逢妻男川では75%がアカミミガメであった。メスの比率はそれぞれ72%および74%と高く、その40%前後が成熟していると推測された。防除前後に実施した目視調査の結果、調査区間のアカミミガメ確認数は両河川ともに半減したものの、未だ多くのアカミミガメが生息していると推測され、メスの比率の高さから、今後も増えやすい状態にあると考えられた。
 今回の広域一斉防除には、逢妻女川で250名、逢妻男川で236名のボランティアが参加した。作業は、ボランティアによる捕獲班と専門家による計測班に分かれ、民・産・学・官の協働で効率的に行うことができた。今後は、良好な河川環境や生物多様性保全を目指し、継続的・自立的な防除活動を視野に、体制づくりの検討を進めていきたい。


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