| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-28  (Poster presentation)

環境DNAを用いて宮城県のメダカの生息状況を探る

*大塚慎也, 栃木陽太(仙台第一高等学校)

ここ数年宮城県内に生息するメダカについて形態と遺伝子に関する研究を行ってきた。その生息状況を確認するためには、網を使って直接個体を捕獲したり、目視で有無を確認したりする方法をとってきた。しかし、河川が濁っている際には目視が困難であること、地形や植物が生えていることにより網による捕獲ができない場合があることなどの問題が生じてきた。そこで、生息状況を調べる新しい方法として、環境DNAを用いた調査を検討した。環境DNAとは、生物が水中で放出した皮膚片や糞に含まれる生物由来のDNA断片のことを指す。これを用いることで、大きく分けて2つのことを調べることができる。1つは、どんな生物がその環境にいるかを明らかにする網羅的な調査である。もう1つは、特定の種がその環境に生息しているのかどうかを調べるターゲットを絞った調査である。後者を用いて、今年度は56地点で環境水を研究対象であるメダカの生息状況を確認した。環境中に放出されたDNAは、採水によって回収した。採水した環境水は、保存液として塩化ベンザコルニウム液を加え持ち帰った。ガラスフィルタで濾過し、DNA抽出キットを用いて抽出した。メダカのシトクロームb遺伝子に特異的なプライマー・プローブを用いてリアルタイムPCRを行い、メダカに特異的な環境DNAの検出を確認した。目視ではメダカの生息を確認できなかった調査地点でも、メダカに特異的な環境DNAは検出された。さらに捕獲調査が必要である。また、採集によってメダカの生息を確認することができたいくつかの調査地点において、メダカに特異的な環境DNAが検出されないこともあった。採水条件など検討が必要である。実験系の再検討は必要であるが、環境DNAによる解析が有効であることを示した。


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