| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-32  (Poster presentation)

ハリガネムシの生態に関する研究

*渡部真衣, 山本真椰, 吉岡李紗(愛媛県立今治西高校)

<目的>ハリガネムシとは類線形動物門ハリガネムシ網ハリガネムシ目に属する水生生物で、生活史において2度にわたり寄生を行う寄生生物である。私たちはこの生物の宿主に対する「洗脳能力」に魅力を感じ、先行研究が少ないために未解明な部分の多いこの生物の謎を解明するために研究を始めた。
<方法と結果>東温市上林森林公園内の池で毎月ハリガネムシを採集した。また、宿主昆虫捕獲用のトラップとハリガネムシ捕獲用のトラップを作成し、森林公園の池周辺と渓流、今治市蒼社川、西条市中山川に設置した。その結果、9月~10月にハリガネムシを多く採集できた。また、生態系が豊かな天然林境界に宿主昆虫が多く、穏やかな流水域でハリガネムシがトラップにかかりやすかった。体長に対する重量は雄よりも、卵塊を含む成熟した雌の方が大である。先行研究にあった「ハリガネムシに寄生された宿主昆虫は光の反射する水面に引き寄せられた」というデータを確かめるための実験は、水を張った水槽に陸地と坂を作成して水辺環境モデルとし、カマドウマを入れて夜間の行動をカメラで観察したが、うまくいかなかった。また、ハリガネムシと模型を用いて雌雄認識能力について調べた。模型は雌雄それぞれのハリガネムシをすり潰したものを詰めたチューブを使用した。ハリガネムシは雄が雌に巻き付くようにして生殖活動を行うのでその活動が確認される頻度を比較した結果、雌の肉が入ったチューブに雄が引き寄せられるような反応を示した。現在、人工寄生実験を行っている。卵塊から孵化した幼生を巻貝を中間宿主として寄生させシスト化を確認した。今後、終宿主の陸生昆虫に巻貝を捕食させる予定である。
<今後の展望>宿主昆虫への人工寄生を進め、ハリガネムシの寄生成長について観察を続ける。秋にハリガネムシの生殖期になると、水辺環境モデルによる実験を継続する。


日本生態学会