| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


シンポジウム S01-3  (Presentation in Symposium)

絶滅か、進化か:進化的救助と遺伝的救助

*山道真人(東京大学)

集団のすべての個体が死ぬことによって起こる絶滅は不可逆な変化であり、生態系に大きな影響をもたらしうる。絶滅の過程を深く理解することで、希少種の保全や狩猟・漁業対象種の管理、病原生物・外来種の根絶などを効率よく行うことが可能になるだろう。進化が絶滅に与える影響として、小集団における遺伝的浮動が有害対立遺伝子の固定を促進し、適応度を減少させることが以前から知られてきた。しかし近年になって、短期間で起こる適応進化が絶滅過程に与える影響が注目を集めている。特に、個体数減少の原因となった新しい環境に適応することで集団が絶滅を免れる「進化的救助(evolutionary rescue)」や、近交弱勢を防ぐために他集団から個体を移殖する「遺伝的救助(genetic rescue)」による絶滅の回避が可能であることが、さまざまな研究によって示されている。個体数と進化の双方を管理することで、救助によって絶滅を防いだり、救助を阻害して根絶を促進したりすることが可能になるかもしれない。本講演では進化的救助と遺伝的救助の理論と実証についての研究を紹介するとともに、効果的に個体群管理を行う上で救助が果たしうる役割について議論したい。


日本生態学会