| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


企画集会 T10-4  (Presentation in Organized Session)

コナラ枯死木の菌類群集と分解過程にナラ枯れが与える影響

*深澤遊(東北大・農), 田中延亮(東大・農), 小南裕志(森林総研), 高木正博(宮崎大), 松倉君予(東北大・農), 上村真由子(日大), 門脇浩明(生態研), 宮崎怜(横国大), 衣浦晴生(森林総研), 鈴木智之(東大・農), 小林真(北大), 山下聡(徳島大), 潮雅之(生態研)

ナラ枯れ(ブナ科樹木萎凋病)は、カシノナガキクイムシにより媒介される子嚢菌Raffaelea quercivoraにより引き起こされる樹病であり、近年日本全国でミズナラやコナラといったコナラ属樹木の大量枯死を引き起こしている。大量に発生する枯死木は分解することによりCO2の放出源となり、地球温暖化を促進する可能性が指摘されているが、病虫害による枯死木の分解プロセスが、他の枯死要因(風倒など)による枯死木とどう異なるのか、そのメカニズムをモニタリングから実証した研究はほとんどない。こうした状況を踏まえ、我々は2016年から、ナラ枯れにより当年に枯死したコナラおよび人為的に伐倒したコナラの丸太の分解過程を比較モニタリングするプロジェクトを開始した。プロジェクトの目的は、丸太の分解過程とそれに関わる生物群集の関係を分解初期からモニタリングすることで、ナラ枯れがコナラ丸太の分解に与える影響とその生物学的なメカニズムを解明することである。本発表では、丸太設置1年後までの材分解にナラ枯れが与える影響について報告する。仙台(宮城県)、山城(京都府)、田野(宮崎県)の3ヶ所に設置した直径19~30cm、長さ1mのコナラ丸太の材密度には、設置した2016年秋時点ですでにナラ枯れの影響が観察され、健全伐倒木に比べナラ枯れ木の材密度は低かった。全ての調査地において設置1年後までに材密度の有意な減少が認められた。さらに山城においては、設置1年後の材密度の残存率にもナラ枯れが負の影響を与えていた。これらの結果は、ナラ枯れがコナラ枯死木の分解を促進する効果があることを示している。


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