| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) B01-01  (Oral presentation)

やんばるの送粉系における外来セイヨウミツバチの現状
Status of alien Apis mellifera in the pollination network in Yanbaru (Okinawa Island)

*安部哲人(森林総研九州), 齋藤和彦(森林総研関西)
*Tetsuto ABE(FFPRI Kyushu), Kazuhiko Saito(FFPRI Kansai)

セイヨウミツバチは養蜂目的で世界各地に導入され,現地の野生植物に訪花している.本研究では沖縄県やんばる地方の送粉系にセイヨウミツバチが及ぼす影響を調査した.2015~2017年の3年間で沿岸の市街地から森林地帯にかけて,ランダムにルートセンサスを行い,87種の植物への訪花を観察した.調査の結果,やんばるの送粉系は在来のハナバチ,チョウ類,ハエ類に加え,外来送粉者のセイヨウミツバチが主な訪花者となっていた.セイヨウミツバチは全訪花観察植物のうち18%(16種)で訪花が確認され,総訪花頻度は観察された98種の訪花者中最も高かった.また,セイヨウミツバチは戦後に皆伐歴がない非皆伐林では優占度が低かったが,二次林では優占度が高くなっており,伐採跡地や市街地では最も優占していた.外来植物も同様に伐採跡地や市街地では優占しており,セイヨウミツバチが訪花した植物の1/3は外来植物であった.こうした立地ではやんばるの送粉系が変質した状態であると考えられた.温暖な沖縄県ではコロニー出荷用の養蜂業が盛んであり,セイヨウミツバチは林内に置かれた巣箱を中心に採餌している可能性が高い.一般的にセイヨウミツバチは花資源の収集に高度に適応したジェネラリストであり,多くの植物種にとって送粉に大きく寄与している.しかし,コロニー維持のため大量の餌資源を必要とすることから集中的に訪花する習性があり,在来送粉者の強力な競争相手となりうる.また,体サイズや行動圏なども在来送粉者と大きく異なるため,花と昆虫との共進化系への影響力が強い送粉者と考えられる.世界自然遺産の候補地となっているやんばる地方の生態系保全にとってセイヨウミツバチの養蜂は重要な問題となるであろう.


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