| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) B01-07  (Oral presentation)

風散布のカエデ翼果は、何故''赤い色''をもつのか-食害防御の可能性-
why maplesamara  is  ''red'' -Possibility of defense to herbivour-

*園川舞華, 中村美紗, 井出純哉(久留米工業大学)
*Maika SONOKAWA, MISA NAKAMURA, JUNYA IDE(Kurume institute of technology)

植物は緑色とは限らず、赤い色の葉をもつ植物も存在する。赤い色素は植物の成長には直接寄与しないのだが、何故栄養分を使ってまで赤く色づけているのか。その適応的意義に、植食者に対する警告色としての機能があるといわれている。しかし、赤い色が警告色であるという説を検証した報告は少ない。そこで本研究では、カエデ属イロハモミジ樹木の翼果が赤い色を呈することに着目した。赤い色が警告色であるとすると、赤みが濃い翼果ほど防御物質が多く蓄えられているのではないかと予想した。
   カエデ樹木11本の翼果を対象に画像解析・成分抽出を行い、各樹木の月ごとの変化を、見かけ上と実際の成分含有量との2つの観点から検証を行った。その結果、カエデ樹木は同種、同時期であっても外観上、成分含有量に個体差があり、さらに季節性があることが分かった。植食者の活動が盛んであると予想される夏の時期において、色素成分量、総ポリフェノール(防御物質)ともに最大含有量を示した。一方、画像解析により見かけ上では、5月を最大に翼果の成長に伴って赤みが薄れていくことが明らかとなった。つまり、見かけ上最も赤い時期において、防御物質の含有量は最大を示さなかった。このことより、赤い色が警告色であるという仮説は否定された。しかし、総ポリフェノールは量的防御物質として機能することが多いため、その他の質的防御物質が未熟な時期に含まれていた可能性もある。もしそうであるとすると、未熟な時期に赤い色は警告を示しており、実が大きくなって栄養が増えてからは、色素成分及び量的防御物質の貯蓄によって、被食回避をしていると考えられる。


日本生態学会