| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) B01-11  (Oral presentation)

キャベツがモンシロチョウから大被害を受ける理由-植食者比成長量と植物被害量の関係
Correlation between relative growth rate of herbivore and plant damage by herbivore: Prediction and reality

*今野浩太郎(農研機構 生物機能)
*Kotaro KONNO(NIAS, NARO)

生態系中の植食昆虫の生物量や植物被食率(年間5%程度)は一般に小さい。しかし、一部の植食昆虫は多種天敵存在下でも常に大発生し植物に多大な被害を与える。その好例がモンシロチョウである。モンシロチョウ幼虫は栽培品種・野生種、圃場・林中に植栽した場合を問わずキャベツ上で常に大発生しキャベツはしばしば丸坊主にされた。一方、林中・圃場では通例、植食者は発見が困難なほど少ない(クワ専門食のクワコ他)。なぜこの差は生ずるか?演者は最近、食物網の物質流平衡から生態系中の草食・肉食動物の物理単位付生物量を予測可能な(森林・サバンナの草食・肉食動物の面積当生物量を正確に予測)定量的食物網新数理モデルを作出した(Konno (2016) Ecological Monographs 86, 190-214)。本モデルは、植食昆虫量hが植食昆虫の一日当の比成長率Ghに比例し、植物被害量PDMvはGhの二乗に比例すると予想した。そこでモンシロ-キャベツ、クワコ-クワ他多くの植食昆虫-植物の組合せで幼虫期間(卵―蛹間)のGhを25度で比較した。Ghは多くの葉食昆虫で0.4-0.7程度(クワコ-クワでは0.351で樹木葉食で標準的、1日で1.351倍)、ササ食昆虫では0.1と小さいのに対しモンシロ-キャベツでは野生・栽培品種種ともGh=1.20程度(1日で2.2倍)と抜群に高かった。この値からモデルは、1種植物-1種植食昆虫の一様系間比較(捕食者共通)でもモンシロはクワコの3.4倍存在し、キャベツ被害はクワの約12倍となり、多種草食昆虫-多種植物共存系では発生量の差がさらに増すと予測した。以上、モンシロ幼虫の比成長率Ghの異常な高さがモンシロ幼虫多発の主因と示唆された。さらに、マメ科花上で大発生する花食害虫ウラナミシジミのGhはクズ花で0.9程度と高く、高Ghと多発の相関およびモデルの正しさが示された。


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