| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) B03-07  (Oral presentation)

国立環境研究所におけるヒアリ防除システム開発
Development of fire-ant control system at National Institute for Environmental Studies

*坂本洋典, 坂本佳子, 中嶋信美, 五箇公一(国立環境研究所)
*Hironori SAKAMOTO, Yoshiko SAKAMOTO, Nobuyoshi NAKAJIMA, Kouichi GOKA(NIES)

南米を原産とするヒアリ Solenopsis invictaは,1930年代にアメリカ合衆国に侵入し,生態系および人間活動に甚大な負の影響を与え,IUCNの定める侵略的外来生物ワースト100種および外来生物法における特定外来生物に指定されてきた。アジア圏においても,マレーシア,シンガポール,台湾,中国へと侵入および分布拡大に成功してきた。その中で2017年には,日本および韓国において輸入コンテナに随伴したヒアリの侵入がついに確認された。アジア圏の諸国のうち,2003年に侵入が確認された台湾においては,翌2004年に国立ヒアリ対策センターが設置され,同センターを中心にヒアリ防除システム開発に努めてきた。とりわけ,地中にいるわずかな個体数のヒアリすら検出可能なヒアリ探知犬の開発は,ヒアリの早期発見・防除を実現するための手段として注目に値するが,根絶・分布拡大の抑制へは至っていない。こうした海外の状況を踏まえ,国立環境研究所では,ヒアリに対して化学的防除を基本戦略として,薬剤メーカー協議会を設立し,官民共同の態勢でこれまでの情報・技術に基づき,今後の侵入・定着時に備えた防除戦略を構築してきた。2018年度よりはさらにヒアリ対策プロジェクトを始動し,防除対策の集中・強化を進めてきた。とりわけヒアリの早期発見に際しては,非専門家による迅速な同定が可能なLAMP法による同定キットの開発に至っている。本講演では,これら最新のヒアリ防除システムの開発について概説する。


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