| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) C01-02  (Oral presentation)

外来昆虫ブタクサハムシの北海道の2個体群:異なる進化シナリオによる適応か?
Two populations of an introduced beetle Ophraella communa in Hokkaido: different evolutionary scenarios for adaptation to northern climate?

*田中幸一(農研機構), 村田浩平(東海大学)
*Koichi TANAKA(NARO), Kouhei Murata(Tokai Univ.)

外来生物が移入地に定着し分布を拡大するためには、移入地の環境に適応しなければならず、その過程で特性が変化することがある。外来生物に対する的確な対策を講じるためには、外来生物が新たな環境に適応・進化する過程とその機構を解明することが重要である。演者らは、北米原産の外来昆虫であるブタクサハムシにおいて、生殖休眠誘導に関する光周性が、日本に移入後に変化したこと、全国各地で採集した系統について緯度、標高に沿った地理的勾配があることを報告した。北海道では、これまでに苫小牧市および函館市とその周辺に、本種が定着していることが分かっている(苫小牧個体群と函館個体群と呼ぶ)。これら2つの個体群の光周性は大きく異なり、函館個体群の光周性が全国的な傾向の延長線上にあったのに対し、苫小牧個体群(2011年に採集した系統)の光周性は全国的な傾向から外れ、関東北部から東北南部の個体群に近いものであった。このことから、これら2つの個体群は移入経路が異なると考えられた。さらに、苫小牧個体群が、苫小牧とは気候の異なる地域から移入したとすると、同地の気候にまだ十分適応しておらず、光周性が変化する可能性があると考えられた。そこで、2012年、2013年、2014年、2016年に苫小牧市で採集した系統を用いて、光周性が変化するか調べるための実験を行った。しかし、2011年系統およびこれらの系統の間に、光周性の明らかな違いを見出すことはできず、光周性は変化していないようであった。したがって、苫小牧個体群は、函館個体群とは異なる機構によって同地の気候に適応している、つまり函館個体群とは異なる進化シナリオによって北方の気候に適応している可能性がある。


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