| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) C01-04  (Oral presentation)

西表島におけるヤエヤマハラブチガエルの成長段階による食性の比較
Comparing the diet of Nidirana okinavana with different body sizes in Iriomote-jima Island

*戸金大(慶應・自然科学教育セ), 秋田耕佑(大阪市環境科学研究セ), 阿南一穂(相模原市役所), 福山欣司(慶應・生物)
*Dai Togane(RECNS, Keio Univ.), Kosuke Akita(Osaka City RCES), Kazuho Anan(Sagamihara City), Kinji Fukuyama(Dep.of Biology, Keio Univ.)

沖縄県八重山諸島の石垣島および西表島に生息するヤエヤマハラブチガエルNidirana okinavanaは、森林伐採や土地造成等に伴い、繁殖場所である湿地が失われ生息数が減少している。食性は生活史における様々な生態的特性と幅広く結びついており、保全策を検討する上で必要不可欠な情報である。本研究では西表島に生息するヤエヤマハラブチガエルの胃内容物を分析し、体サイズおよび年齢による食性の比較を行った。
調査は2018年2月および9月に西表島で行った。湿地帯や林内を踏査し、捕獲した個体を0.1%MS222水溶液で麻酔後、強制嘔吐法により胃内容物を摘出し、80%エタノールで固定した。胃内容物に含まれる生物種を顕微鏡下で原則目レベルまで同定した。体サイズの指標として、吻端から総排出口までの距離(SVL:Snout-Vent Length)をノギスにより0.1mm単位まで測定した。左後肢第3指を第2関節まで切り取り10%ホルマリンで固定し、スケルトクロノロジーによって各個体の年齢を推定した。
調査の結果、のべ49個体を捕獲し、33個体(2月:14個体、9月:19個体)で胃内容物を確認した。砂等の無機物を除くと、被食動物群全体で6綱19目296個体が確認された。これらを分析した結果、体サイズや年齢と食性の関係には大きな差異は認められず、いずれの体サイズや年齢においても昆虫綱が最も多く出現し、その割合は被食動物全体の80%以上を占めていた。特にハチ目アリ科は被食動物全体の約40%を占め、アリ科を1個体以上捕食していた個体の割合は約70%であった。今回確認されたアリ科の多くはオオズアリ属やフトハリアリ属などで、体長5mm未満の個体が多数を占めていた。このことから、ヤエヤマハラブチガエルは変態上陸後の各成長段階において昆虫綱を主要な餌資源として利用しており、中でも 小型のアリ科を高い頻度で利用している可能性がある ことが示唆された。


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