| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) C01-05  (Oral presentation)

アマモ地下茎に棲息するネムグリガイの生息場所利用
Habitat use of Zachsia zenkewitschi in rhizomes of Zostera marina

*石村理知, 絹川亨(神戸大 大教推進機構)
*Masachika ISHINMURA, Tohru KINUGAWA(Kobe University IPHE)

矮雄をもつネムグリガイはフナクイムシ科に属する二枚貝の一種で、海草の地下茎に穿孔し地下茎組織を餌として利用しつつ地下茎内に棲管を形成することが知られている。しかし、自然条件下で生息する海草の地下茎から直接採集されることは稀で、その生態はあまり知られていない。近年、海面に漂流する海草の地下茎に本種が高確率で発見されることが明らかになった。そこで、海岸に打ち上げられた地下茎付の海草を定期的にサンプリングし、その地下茎を解剖することで本種の生息場所利用を明らかにした。
兵庫県洲本市の由良地区の砂浜海岸定期的に地下茎付きの海草アマモをサンプリングした。実験室に持ち帰ったアマモは葉長、葉幅および地下茎長を測定した。その後地下茎のみに切断し、軟X線を用いた写真撮影を行った。そして、X線写真を参照しながらアマモ地下茎を解剖し、ネムグリガイの採集を行った。
写真撮影と地下茎解剖を併用した観察結果より、ネムグリガイは採集された地下茎付きアマモの約10~15%程度で発見されることが多かった。ネムグリガイの棲管が観察されたアマモのサイズに特徴的な傾向はなく、またアマモ地下茎切断面とネムグリガイの棲管の位置関係からも、ネムグリガイの地下茎への侵入が、アマモが地下茎付で流出することに影響を及ぼしているとは言えなかった。ネムグリガイの棲管は主にアマモ成長点の存在する葉鞘下部に向かって伸張していることが多かった。
ネムグリガイがアマモの地下茎伸張の向きに併せて棲管を伸張させる傾向を有することは、継続的に利用可能な空間と餌を確保し続ける可能性が高くなるだろう。矮雄戦略をとる本種メス個体にとって有効な生息場所利用であると考えられた。


日本生態学会