| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) C01-08  (Oral presentation)

九州北部海域におけるメバル複合種群の産仔期の再検討~仔魚・親魚を探して~
Reexamination of offspring season of the Sebastes inermis species complex in Northern Kyushu - search for larvae and offspring-condition adults -

*安武由矢, 望岡典隆(九大院生資環)
*Yoshiya YASUTAKE, Noritaka MOCHIOKA(Kyushu Univ.)

【背景と目的】
 アカメバル Sebastes inermis,クロメバル S. ventricosus,シロメバル S. cheni の3種はこれまで“メバル”という1種であると考えられていた種で,これら3種はまとめてメバル複合種群と呼ばれている.九州北部海域の“メバル”は12月末~1月に仔魚として産出され,産出後約一年で8 cm程になることが知られているが(三尾 1961),本海域では冬期に5 cm程度のメバル複合種群が確認されたため,産出期を再検討することを目的とした.
【材料と方法】
 2016年11月~2017年7月に九州北部海域で採集されたメバル複合種群稚魚25個体 の耳石(礫石)から日齢査定を行い,2018年4月~2019年2月に漁獲された親魚72個体の湿重量および生殖腺重量を計測し生殖腺重量比(GSI)を求めた.また,2018年6月から12月に稚魚ネットによる仔稚魚採集と流れ藻採集調査による稚魚採集を行った.地点は福岡県福津市恋の浦で過去の流れ藻採集調査で冬~春に“メバル”が採集されたエリアで行った.
【結果と考察】
 耳石の日齢査定により冬期に採集された個体は夏期に,夏期に採集された個体は冬期に産出されたことがわかり,これまで冬期と考えられてきた産出期以外の夏期に産出されたと推定される個体の確認がなされた.一方で,夏期に交尾及び産出を行いそうなGSI値の高い親魚の水揚げはなく,夏期のメバル複合種群の水揚げ自体が少ないことや冬期にGSI値が高まること,メスよりもオスの方が先に成熟することなど先行研究と同様の結果が得られた.稚魚ネット採集および流れ藻採集からは夏期に産出された仔稚魚は確認されなかった.メバル複合種群の漁獲は冬期に多いが,主な漁法である定置網と釣獲の漁場は冬期と夏期で変えることはほぼないことから,冬期と夏期でメバル複合種群の生息場所に違いがある可能性が高いと考えられる.また,その違いから冬期と夏期で産出を行う場所も異なる可能性が示唆される.


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