| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) F02-04  (Oral presentation)

モンゴルの耕作放棄地における草原優占種の導入と定着
Introduction and establishment of steppe dominant species at abandoned cropland in Mongolia

*Kengo TAKAHASHI(Univ. of Tsukuba), Kiyokazu Kawada(Univ. of Tsukuba), Norikazu Yamanaka(Tottori Univ.), Narangerel Tseden-Ish(MULS), Jamsran Undarmaa(MULS)

 近年モンゴルでは不適切な農耕地利用により耕作放棄地が増加している.耕作放棄地では広葉草本(ヒユ科やキク科など)が優占し,10年以上放棄されても種組成は自然草原の状態には戻っていない.植生修復の制限要因としては,植物が利用可能な栄養素の不足,土壌構造の変化による土壌水分の不足,自然草原種の種子が無いことが挙げられる.しかしながら,モンゴルの耕作放棄地の修復を行った研究は少なく,自然草原に戻す修復方法は分かっていない.前研究における施肥による植生修復試験では,土壌栄養素と植物体の増加が確認されたが,種組成の変化は確認されなかった.そこで本研究では,耕作放棄地における遷移を制限する要因を解明するとともに,耕作放棄地を元の草原に戻す効果的な植生修復の方法を検証することを目的とする.
 調査はモンゴル国ウランバートル市から西に約63 kmの耕作放棄地で行った.植生修復の制限要因解明のために,モンゴル草原の優占種であるStipa kryloviiの播種と処理(施肥,耕起,灌水,畜糞混入)を組み合わせた野外試験を行い,植生修復に向けた在来イネ科多年生草本種の発芽・定着の可能性を評価した.
 播種試験では,自然草原の植物種を播種することで発芽が確認され,耕起処理によって土壌水分量が増加し,発芽率や葉数,分げつ数も増加していたが,施肥処理では発芽率が低くなっていた.一方で,畜糞の混入によって土壌の保水力や栄養素が増加し,耕起処理よりも発芽率や葉数,分げつ数が多かった.以上の結果から,耕作放棄地の植生修復の主な制限要因は自然草原の植物の種子が無いことであると示唆された.また,耕起や畜糞混入によって土壌水分量や土壌栄養素が増加し,発芽や成長を促していたことから,耕作放棄地における効果的な植生修復方法は,耕起後に畜糞を混入し,自然草原の植物の種子を播種することであると結論付けられた.


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