| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) F02-06 (Oral presentation)
都市河川では,河岸の大部分はコンクリートで護岸され,草本類はこれらに沿ってわずかに繁茂する程度である.しかしながら,このような草本類にも陸生昆虫が生息し,これらが餌資源として魚類等に利用されている可能性がある.そこで,本研究では,野外操作実験によりコンクリート護岸法面に繁茂するツル性植物が陸生昆虫の供給を通じて,魚類等の水生動物群集の維持に果たす役割を明らかにすることを目的とした.
愛知県内の都市部を流れる河川において護岸に草本がある植生区と除去する非植生区を設け,水盤トラップを用い落下陸生無脊椎動物を定量化した.各調査区にエンクロージャーを設置し,優占魚種(カダヤシ)を12個体ずつ導入した.導入8日間後に体長,湿重量を計測し,胃内容物を分析した.実験の結果,陸生昆虫の分類群全体の落下供給量には植生区と非植生区の間で有意な差は認められなかったが,分類群数は非植生区(3分類群)よりも植生区(8分類群)で多かった.また,アリ,トビムシ,クモ,ハチ,グンバイムシが植生区のみで確認された.実験魚個体の採餌量にも植生区と非植生区の間で有意差は認められなかったが,植生区でのみアリ,トビムシ,双翅目および植物片が食べられていた.実験期間終了後,各エンクロージャー内の実験個体の総重量は両区ともに減少していたが,非植生区に比べて植生区で減少率は小さく,さらに生残率も植生区で有意に高かった.以上の結果から,都市河川の護岸法面に繁茂する植生は,水中に餌資源となる多様な陸生昆虫を落下供給することを通じて,魚類の生息に寄与する可能性が示唆された.