| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) F02-07 (Oral presentation)
河川堤防には、定期的な草刈りによって維持される二次草地が成立している。こうした堤防草地は、管理の継続性や上流から下流にかけての空間的な連続性等の面から、草原性植物にとっての重要な生育地になりうることが指摘されている。河川堤防では、洪水防止のための堤防強化や堤防沿いでの都市開発等に伴って、土壌の移動を伴う様々な改修が行われてきた。これまでの研究から、こうした改修履歴によって土壌の理化学性が異なり、堤防に成立する草地植生にも影響を与えている可能性が示されている。また、土地改変に伴う土壌微生物相の変化が植生の回復に影響を与えうることも指摘されている。本研究では、利根川上流河川事務所管内の堤防草地を対象として、改修履歴の違いが草地植生と菌根菌群集に及ぼす影響を評価し、河川堤防における種多様性の高い草地植生の回復可能性を検討した。2018年4月に改修履歴の異なる堤防草地23地点を対象として植生調査および土壌サンプリングを実施した。採集した土壌から植物根を選り分け、DNAを抽出しアーバスキュラー菌(AMF)のrRNA領域を次世代シーケンサ―(MiSeq)でシーケンスし、DNAバーコーディングによりAMFに該当するOTUを選別した。解析の結果、改修履歴の有無によってAMF群集は明確に異なり、草原性植物の種多様性が高い地点のみ他の植生タイプとは異なるAMF群集が成立していることが分かった。また、地上植生における植物種多様性が低い地点であっても、改修履歴がない場所には、同様のAMF群集組成が成立している場所も存在した。今後は、地上植生のみでは判断できないAMF群集の差異に着目し、土壌や植物体の移植による草地植生の回復可能性を検討する必要がある。