| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) F02-08 (Oral presentation)
近年,河川管理においては,生態系への配慮が必要不可欠になっているため,河川水辺の国勢調査など種多様性に着目したさまざまな分類群の調査データが集積されつつある.本研究で対象とする魚類は,他の水生動物(水生昆虫等の底生動物)に比べ,大型で遊泳力があることから,調査に時間的・労力的なコストがかかるが,河川整備に対する環境影響評価手法を確立するうえで,欠かせない分類群である.
そこで本研究では,魚類の簡易なモニタリング方法として,近年急速に開発が進んでいる環境DNAメタバーコーディングに着目し,北海道,中部地方,近畿地方,中国地方の一級河川を対象とし,河川水辺の国勢調査による魚類の採集によって得られた結果と,環境DNAメタバーコーディングの分析結果を比較することにより,環境DNAメタバーコーディングの河川における魚類相モニタリング手法としての有効性の検証を進めている.本発表では,それらの結果のうち,2017年度におこなった北海道の一級河川である鵡川,近畿の一級河川である木津川(淀川水系)を対象とした結果を中心に紹介していきたい.
魚類調査および環境DNA分析に供する採水は,2017年10月から11月にかけて,河川水辺の国勢調査の調査地区において,調査地区内の環境区分毎(早瀬,平瀬,淵,ワンド・たまり,支川等)に実施した.サンプル水は,各環境区分の表層水を1L採水し,冷却して持ち帰り,濾過,抽出後,魚類のユニバーサルプライマーを用いたPCRをおこない,次世代シーケンサーにより分析した.その結果,両河川における,すべての地区,環境区分において,採集で確認された種に比べて,環境DNAメタバーコーディングで確認された種が多かった.また,魚種ごとに環境DNAメタバーコーディングの有効性を詳細にみたところ,両河川ともに,一般的な生態の魚類には有効なモニタリング手法であることが示された.