| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) F02-11  (Oral presentation)

地域住民との協働によるビオトープの植生管理
Vegetation management of the biotope by the collaboration with local inhabitants

*洲崎燈子(豊田市矢作川研究所)
*Toko SUZAKI(Toyota Yahagi River Inst.)

 人の緩やかな管理により維持されてきた草地を半自然草地と呼ぶ。このような草地は開発や樹林化等により全国的に大きく減少しているため、半自然草地を主要な生育地とする植物には希少種が多く存在し、その保全が課題となっている。
愛知県豊田市南西部を流れる境川水系、逢妻男川支流の初音川と周囲の水田には、2003年に「初音川ビオトープ」が造成され、チガヤの優占する草地環境が維持されている。この草地は地域住民により結成された「初音川ビオトープ愛護会」が草刈り等の管理を継続的に実施していることで維持されている。同愛護会は2012年から豊田市矢作川研究所の助言を受け、多様な在来種が生育するよう、セイタカアワダチソウ等繁茂しやすい大型の外来種を選択的に引き抜く管理を一部のエリアで行うようになったが、まだ草刈り機を用いた絨毯状の草刈りが主流である。
 初音川ビオトープは草刈りの手法をアレンジすることで、地域住民が主体となって在来種を中心により多様な植物が生育する半自然草地に導ける可能性がある。また、植物の開花を増やすことで、2017年に同ビオトープで養蜂が開始されたニホンミツバチの蜜源を増やし、環境教育の場としての質を高められることが期待される。
 本調査では2018年5~6月にかけてビオトープ内の3ヶ所に愛護会の協力の下、毎月草刈りを行う刈取区、大型の外来草本のみ手で刈るか引き抜く手刈・引抜区、一切刈り取りを行わない無刈区を設置した。また、2017年の予備調査では手刈・引抜区で、草刈区と比較して開花した植物の種数が大幅に増加したことが確認されたが、手刈・引抜処理の労力について愛護会から指摘があったため、代替手法として調査期間内に1度ないし2度のみ通常の草刈りを行うX刈り区を別途設けた。各処理区で6月から9月にかけて植生調査と開花状況の調査を行った結果を報告する。


日本生態学会