| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) G03-03  (Oral presentation)

生活史形質の分散・共分散からみた外来ミジンコの侵入後の放散と進化
Radiation and Evolution of an invaded daphnid in Japan revealed by variance and covariance analysis of Life history traits

*豊田真樹, 田暁飛, 占部城太郎(東北大・生命)
*Maki Toyota, Xiaofei Tian, Jotaro Urabe(Tohoku Univ.)

日本国内の平地湖沼やため池に分布するミジンコDphnia pulexは、数百年以前に北米から侵入した動物プランクトンである。日本に分布するD. pulexはすべて絶対単為生殖型であり、遺伝的に異なる侵入個体に由来する4系統(JPN1〜4)が知られている。このうちJPN1系統とJPN2系統には複数の遺伝子型がみられ、それらは侵入後に進化したと考えられている。これら同一系統内の複数の遺伝子型の存在は、日本国内での適応放散を示唆するものであるが、その検証のためには系統間・内での表現型の違いを把握する必要がある。そこで、本研究では日本各地で採集したD. pulex 計13遺伝子型(JPN1系統:5遺伝子型、JPN2系統:5遺伝子型、JPN3系統:1遺伝子型、JPN4系統:2遺伝子型)を対象に、緑藻類を餌として高低2つの餌量で飼育実験を行い、計14の生活史形質および形態形質の測定を行い比較した。その結果、ほとんどの形質について、系統間でも系統内でも有意な違いが見られた。しかし、遺伝率は形質によって異なり、また系統間でのばらつき(Vb)と系統内(Vw)でのばらつきの相対的な大きさも形質によって異なっていた。これら結果から、D. pulexの日本国内での適応放散の実態と、遺伝的に変化しやすい形質・しにくい形質について議論する。


日本生態学会