| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) G03-04 (Oral presentation)
不妊虫放飼法は、人工的に不妊化した害虫(不妊虫)を大量に放飼することで、野外の害虫(野生虫)の繁殖を阻害し、根絶する防除方法である。現在、沖縄県では、不妊虫放飼法を用いて、サツマイモの世界的な害虫であるイモゾウムシEuscepes postfasciatusの根絶防除事業を行っている。先行研究より、イモゾウムシは、移動能力が非常に低いことが知られているため、不妊虫の放飼は野生虫がいる場所に適確に行う必要がある。その対策の一つとして、不妊虫及び野生虫の空間分布を推定し、それらを比較することで、放飼が適切に行われているかを評価する方法が考えられる。本研究では、現在イモゾウムシの根絶事業を行っている沖縄県津堅島におけるトラップの誘殺データをもとに、クリギング法を用いて、イモゾウムシの不妊虫及び野生虫の空間分布を推定した。その結果、島の中央部(イモ畑)や南西部(住宅街)において、不妊虫の放飼が不足している(不妊虫が野生虫の10倍未満)ことが示された。一方、島の外縁部(防風林)では、不妊虫が過剰に放飼されている(不妊虫が野生虫の100倍以上)ことも示された。以上より、イモゾウムシの効率的防除のために、外縁部に過剰に放飼されている不妊虫の一部を、不足している箇所にまわすなどの対処が必要であると示唆された。