| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) G03-05  (Oral presentation)

近縁種の置換メカニズム:在来コガネムシが減り、アオドウガネが増えたのはなぜか
The mechanism of replacement of related species: Why do endemic scarab beetles decrease and Anomala albopilosa increase?

*福谷愉海(静岡大学), 萬屋宏(農研機構果茶研), 佐藤安志(農研機構果茶研), 笠井敦(静岡大学)
*Yukai FUKUTANI(Shizuoka Univ.), Hiroshi YOROZUYA(NARO), Yasushi SATO(NARO), Atsushi KASAI(Shizuoka Univ.)

本州の多くの地域において,在来コガネムシであるドウガネブイブイAnomala cuprea(以下,ドウガネ)およびヤマトアオドウガネA. japonica(以下,ヤマト)は減少傾向にあるとされる.また,南方起源種アオドウガネA. albopilosa(以下,アオドウ)は,個体数を増やしつつ生息域を北上させ,在来種を圧倒しているとされるが,その実態およびメカニズムはよく分かっていない.そこで,2017年から2年間,静岡県内3地点で各種成虫の発生状況を確認したところ,そのほとんどでアオドウが優勢であり,ドウガネとアオドウの発生時期は重複した.一方,唯一個体数が拮抗した2017年の1地点のみ、各種の発生時期が明確に異なった.これらの種はいずれも広食性であるため,在来種の減少要因がアオドウとの資源競争にあるとは考えにくい.そこで,近縁種間相互作用の1つである繁殖干渉について確認したところ,異種間交尾は同種間と同様の頻度で起こった.また,異種間交尾によって各種メスの寿命が大きく低下する等の影響はなかった.さらに,アオドウおよびヤマトのメスと各種オスとの間で,雑種が形成された.この結果から,野外において各種が雑種を形成していることが予想されたため,COI領域を用いて野外個体のゲノム解析をおこなったところ,ドウガネおよびアオドウ間の雑種は確認されなかったが,ヤマトおよびアオドウ間では雑種と思しき個体が発見された.以上の結果をふまえて,アオドウと在来コガネムシ間における繁殖干渉が種の置換に及ぼす影響を考察する.


日本生態学会