| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) G03-06  (Oral presentation)

気候変動が引き起こすマサバ太平洋系群の産卵場の北上と産卵期間の延長
Climate change shifts northward the spawning ground and extends the spawning period of chub mackerel in the Pacific Ocean

*金森由妃, 高須賀明典, 西嶋翔太, 岡村寛, 市野川桃子(中央水産研究所)
*Yuki Kanamori, Akinori Takasuka, Shota Nishijima, Hiroshi Okamura, Momoko Ichinokawa(NRIFS, FRA)

気候変動に伴い繁殖期が早くなりつつあることは多くの研究によって報告されている現象である.しかし,長期モニタリングの費用・時間対効果の低さや卵稚仔を用いた種同定の難しさにより,海洋生物を対象とした研究は限られている.また,気候変動は生物の分布にも影響を与えるため,繁殖期に移動する動物では,繁殖のタイミングだけでなく繁殖場所の変化も同時に定量評価する必要があるだろう.我々はこれらの課題を,マサバ太平洋系群の40年間の産卵量データに対して時空間モデルを適用することで取り組んだ.その結果,産卵の開始は40年間で早くなることは見られなかったが,産卵の終了が遅くなることで産卵期間が延長していることが分かった.また,2000年以降,産卵場は北に移動しつつあり,この変化は水温の上昇によって生じていることが分かった.さらに,現在の産卵場は,過去の産卵場の水温と類似した場所に位置していることが分かった.これらの結果から,気候変動に伴う環境の変化は繁殖のタイミングと場所の両方に対して同時に影響をしており,時間と空間の両側面に着目することの重要性が示唆された.


日本生態学会