| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) J01-01  (Oral presentation)

人類世における生態系資源利用形態の時空間変化に関する理論的考察
A theoretical consideration on the spatio-temporal variability in ecological resource utility in the Anthropocene

*石井励一郎(総合地球環境学研究所)
*Reiichiro ISHII(RIHN)

本研究では、社会-生態システムを生態資源の流れを見る上で不可欠となる[植生]と[地域住民]の地域内の基本要素からなる基本モデルと、これに生態資源を系外へ持ち出す[企業体]を合わせた計3つの要素と、その間の「生態資源とその対価の流れ」のみからなる単純化したネットワーク構造を抽出し、それぞれの量を変数とした微分方程式系を一般モデルとして構築し、生態系と資源利用の特性をパラメータとして与えたときの各要素のダイナミクス、安定性、存続条件を考察する。まずI. [植生]と[地域住民]のみからなる基本モデルでは、伝統的・持続可能な生態系利用状態が存在することを、関数形、パラメータの妥当性を確認した上で,持続性条件としてもとめる。次にII.これに[企業体]を加えた系を一般モデルとして定式化し、企業体の侵入と存続が I.の基本モデルの持続性条件がどのように変化するか、また②が侵入した上で安定するための条件を検討した。生態系の生産速度/バイオマスの分布、また人間による生態系利用形態の異なる陸域(熱帯林と草原生態)と水域(沿岸と沖域)の生態系の事例を想定して比較し、3つの要素の存続条件から保全策の有効性を調べた結果、一般的な以下の結果を得た。生態系の生産性が大きくなるほど存続できる消費者の総量は増大するが、バイオマスの分布と人間による利用・アクセスの効率によって地域住民と企業体のいずれが存続するかは多くの場合で双安定になる。企業体による生態資源アクセスの効率が低く、地域住民と協働する場合には両者の安定共存が見られるが、これは陸域では草原生態系でみられるものの、水域では実現しにくいことが示唆された。


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