| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) J01-06  (Oral presentation)

マルハナバチの分布変化推定
Estimating range shift of bumblebees

*大野ゆかり(東北大), 横山潤(山形大), 中静透(地球研), 河田雅圭(東北大)
*Yukari OHNO(Tohoku University), Jun Yokoyama(Yamagata University), Tohru Nakashizuka(RIHN), Masakado Kawata(Tohoku University)

野生植物にとって重要なポリネーターであるマルハナバチ類は、近年、世界的に減少傾向にあり、気象変動や土地利用変化により分布縮小していると考えられている。しかし、日本で広範囲で高解像度の過去の分布データは入手し難く、気象変動や土地利用変化による分布変化への影響を捉えることは難しい。そこで我々は、市民が撮影した写真をもとにした現在のマルハナバチ類の分布データと、現在と過去の気候データと土地利用データを使用して、種分布モデルにより、マルハナバチ6種(トラマルハナバチ・コマルハナバチ・オオマルハナバチ・クロマルハナバチ・ミヤママルハナバチ・ヒメマルハナバチ)の分布変化を推定した。推定された過去と現在の分布を比較すると、約30年間の気象変動と土地利用変化によって、コマルハナバチは分布が拡大傾向、それ以外の5種は縮小傾向だった。特に、高標高に生息するヒメマルハナバチの分布が最も縮小しており、温暖化の影響が深刻なことが推測された。土地利用変化のみを考慮した場合は、トラマルハナバチのみ縮小傾向だった。トラマルハナバチの分布減少地域では、森林面積の増加があり、人工針葉樹林の拡大の他、二次林や農地の管理放棄による森林増加が起こっていると推測された。マルハナバチ類は、営巣場所としての森林と採餌場所としての草原の両方を必要としていることがあり、森林の増加によって草原が減少し、採餌場所が減少する可能性もある。マルハナバチ類保全のためには、適切な森林管理が重要だと考えられる。


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