| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) J01-07  (Oral presentation)

ホンドタヌキの疥癬病拡大プロセスへのカメラトラップを用いたアプローチ
Approach to the epidemic process of sarcoptic mange in raccoon dogs Nyctereutes procyonoides viverrinus using photo-trap

*大石圭太, 坂口悠紀, 畑邦彦, 曽根晃一(鹿児島大学)
*Keita OISHI,, Yuhki Sakaguchi, Kunihiko Hata, Koichi Sone(Kagoshima Univ.)

 鹿児島大学農学部附属高隈演習林では、赤外線センサー付きカメラを用いた野生動物の調査を行っている。ホンドタヌキ(Nyctereutes procyonoides)の撮影のうち、疥癬病を発症しているタヌキの撮影が約50%を占める時期もあり、疥癬病はタヌキ個体群に対して少なからず悪影響を及ぼしていると推測される。しかし、動物愛護の観点から、疥癬病の経過観察を行うことは難しく、野生のタヌキを対象とした疥癬病の研究は、ロードキルにより死亡したタヌキを対象とした報告がわずかにある程度であり、感染ルートなどのメカニズムはほとんど明らかになっていない。
 そこで、本研究では、赤外線センサー付きカメラを用いたカメラトラップによるタヌキの疥癬病の感染ルートの解明を試みた。2015年5月~2016年11月にかけて、集落に隣接し、常緑広葉樹林・針葉樹人工林・針広混交林がパッチ状に混在した林班約20haに18サイトのカメラトラップステーションを設定した。タヌキの撮影頻度および疥癬病罹患率の季節変動、各サイトと集落の距離と罹患率の関係を解析した。その結果、タヌキは集落での活動機会が増える冬に集落近くで感染し、その後、山奥へ感染が拡大していくことを示唆する結果が得られた。


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