| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) M01-05  (Oral presentation)

植物のバイオマスと誘導防御を通じた間接効果による植食者の共存と密度制御 【B】
Density regulation of co-occurring herbivores via two indirect effects  mediated by biomass and non-specific induced-defense of plants 【B】

*山内淳(京都大学), 池川雄亮(琉球産経(株)), 大串隆之(京都大学), 難波利幸(大阪府立大学)
*Atsushi YAMAUCHI(Kyoto Univ.), Yusuke Ikegawa(Ryukyu Sankei KK), Takayuki Ohgushi(Kyoto Univ.), Toshiyuki Namba(Osaka Pref. Univ.)

同一の植物を利用する植食者の間には、植物を介して間接的な相互作用が生じる。そうした植物を介する効果としては、植物の消費により生じる「植物量を介した間接効果」と、植物の質の変化により生じる「植物の質の変化を介した間接効果」が考えられる。間接相互作用は空間的あるいは時間的に隔てられた植食者の間について議論されることが多いが、もちろん時空間的に共存している植食者の間にも働いているはずである。これら2つの間接効果は同時に作用しうるため、それらを分離して評価することは難しい。特に、時空間的に共存している植食者間について、実証的にそれらを評価することはことさら困難である。そこで、1植物-2植食者の3者系を想定した理論モデルを構築し、2つの間接効果の役割を理論的に明らかにする。植食者の間には干渉型競争などの直接的な相互作用は存在せず、また植物は2種の植食者に対し非特異的に作用する防御を誘導することにより、餌資源としての質が変化するとする。その誘導防御にはコストが伴うが、それも踏まえた上で植物は、個体の増殖を最大化させるように自身の防御レベルを調整すると考える。2種の植食者の密度、植物のバイオマス、植物の防衛レベルの4変数のダイナミクスを解析し、それぞれの植食者が単独で食害する場合と2種の植食者が同時に食害を与える場合とで、それらの変数の平衡状態の値を比較することによって間接効果の役割を検討した。その結果、非特異的な誘導防御は植食者の共存を促進し、また共存状態では一方の植食者は「植物量を介した間接効果」により、他方の植食者は「植物の質の変化を介した間接効果」により、個体数が制御されているとみなされることが分かった。このことから、植食者の共存状態では、2つのタイプの間接効果が同時に個体数の制御要因となりうることが明らかになった。


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