| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) M02-05  (Oral presentation)

メタゲノム解析によって明らかにされたアリのバクテリア叢の多様性
Hidden diversity in ant-associated bacterial communities revealed by meta-genomic analyses

*下地博之(関西学院大学), 伊藤英臣(産総研), 松浦優(琉球大学), 菊池義智(産総研)
*Hiroytuki SHIMOJI(Kwansei Gakuin University), Hideomi ITOH(AIST), Yu MATSUURA(University of the Ryukyus), Yoshitomo KIKUCHI(AIST)

昆虫と細菌の多様な共生現象は自然界で普遍的に見られ、昆虫の生存や成長繁殖に関わるあらゆる側面に大きな影響を与えている。アリは真社会性昆虫と呼ばれ、集団生活する個体間の特殊な分業体制 (繁殖個体である女王と労働個体であるワーカー) のもとで社会を形成する。アリ科においては近年、特にワーカーを対象とした共生細菌に関する研究が進み、多くの知見が蓄積されてきた。しかしその一方で、カーストに着目して細菌叢を比較した研究はこれまでほとんど行われてこなかった。本研究では、様々な生物学的知見が蓄積され飼育が容易なトゲオオハリアリを用いて、16SrRNA遺伝子のアンプリコンシーケング法を用いて、女王とオス、ワーカー (巣の中で働く内役と外で採餌する外役) の細菌叢を比較解析した。沖縄本島の様々な地点で採集した22コロニーを用いて各カーストの細菌叢を比較したところ、採集地に関わらずほとんど全てのワーカーでで1種の細菌 (Uncultured Firmicutes) が優占していることが明らかとなった。一方で、全てのオスと女王では多くの場合非常に少ない割合いでしか存在しなかった。系統解析の結果、本細菌種は先行研究で軍隊アリなどの外役ワーカーにおいて発見された腸内共生細菌と極めて近縁である事が明らかとなった。以上の結果に加え、幼虫と蛹を加えたリアルタイムqPCRを用いたカースト間でのUnc. Firmicutesのコピー数 (絶対量) の比較とFISH法を用いた局在の観察の結果から、カースト特異的に現れたUnc. Firmicutesの機能とコロニー内伝播機構について議論する。


日本生態学会